研究概要 |
本研究では, 放射性廃棄物の固化処理法として代表的なホウケイ酸ガラス固化に比肩し得る代替法と言われている人工岩石固化体, いわゆるシンロック固化体の合成と評価に関し, 次の三つの問題点, すなわち, 1)結晶構造に起因する取り込み元素の選択性を考慮した鉱物組織の調整, 2)常圧焼結を可能とする固化体製造工程の簡略化, 3)さらに, 1)に関連して, 焼結体の特性(特にこの場合は浸出特性)を大きく支配する結晶粒界の組成制御, に着目した検討を行った. 本年度は研究の最終年に当り, 上記3点を中心に研究成果のとりまとめを行った. まず, 課題1)については, 我国で排出される放射性廃棄物の特徴である高アルカリ含有廃棄物の模擬組成とシンロック基礎組成との配合組成を選定した上で, 廃棄物負荷量,10,20,30wt%に対し, 最適焼成条件を1200°,1170°,1130°C,6〜8時間と決定した. 2)については1)と併行して, 常圧焼結法での固化体を作製し, その密度の値より常圧焼結によっても, 充分満足すべき結果を得た. さらに3)については構造用セラミックスの水熱腐食関係の研究成果とも併せ, 上記1)2)の成果に加え, 結晶粒界を別途制御することにより, 浸出特性を改良し得る基礎的方途を見い出している. また, 本研究で得られた固化体の浸出試験による評価の結果は, Cs, Naで代表されるアルカリ成分以外の成分の浸出は類似組成のガラス固化体に比べ, はるかに低い浸出率が確認されたが, アルカリ成分の浸出は, ほぼ同程度であった. しかし, 浸出試験後のSEM観察, 浸出メカニズムの考察より, シンロック固化体からのアルカリ成分の浸出はガラス固化体と異なり, 主として粒界に偏在するアルカリ成分に起因することが見い出された. この結果は上述3)の手法により, シンロック固化体でのアルカリ浸出特性はさらに改良されることも期待される. 異常の成果より, 本研究の所期の目的はほぼ達成し得たものと考えている.
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