研究概要 |
高電導性液体や溶液の誘電率測定用の4端子電極を試作した. また誘電率測定装置の駆動及びデータ解析のためのソフトウエアの開発も行った. 主な成果を以下に記す. 1.円筒形容器の両端に電流電極, 円筒内側にリング状電圧電極を固定した4端子電極を作成した. 電流, 電圧両電極間距離の異なるもの3種類を作り, 最適の距離を調べた. 両電極間間隔の狭いセルでは分極効果が現われ, 逆に広いセルでは別の誤差が見出され, 中程度のセルが最上であった. しかし電圧電極の挿入, 固定が工作上難しく, それ故の失敗作が相次いだ. また電圧電極を電流電極板の中央に穴をあけて配置した電極も作成した. 2.この測定系のソフトウエアは安藤電気社製擬似雑音誘電スペクトロメーター駆動用のソフトと, データ解析用のソフトから構成された. 前者は時間領域の雑音応答の高速フーリエ変換等の機能をもつ. 後者はデータの記憶, 相互の比較, 積算, 平均化, curve-fitting等を行うためのものであり, これにより測定値のもつ欠陥をある程度除去できるようになった. 3.この測定系を用いてマレイン酸共重合体およびデキストラン硫酸ソーダの誘電分散の測定を行った. 後者は電荷密度の異なる4種の試料から成り, そのデータの比較から, 誘電率増加高(Δε)は電荷密度にほぼ比例することが判った. また濃度当りのΔεは濃度と共に減少し, 非線形性を示した. 緩和時間は濃度, 電荷密度に余り関係ないことが判った. 4.高周波域での誘電緩和測定法であるTDR法用の同軸型電極の作成も行った. これよりゲル中の水和水の誘電率の温度依存性を測定し, 水の結合状態を調べた. 中性ゲルでは夫々がデバイ型の単分散型の2つの分散から成り, 酸性ゲルでは夫々多分散型の2つの分散から成ることを見出した.
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