研究概要 |
微細物質の3次元形状をリアルタイムで立体視するために, 双眼走査型電子顕微鏡を開発した. 通常の走査型電子顕微鏡の対物レンズと試料の間に1対のコイル(偏向コイル)を置く. 電子線の上のコイルで, 一旦外側に曲げられる. 次に, 元の焦点に向かうように, 下のコイルでもう一度曲げられる. この回り道により, 電子線は顕微鏡の光軸に対して傾いた方向から試料を照射する. 通常の走査型顕微鏡と較べて, 走査線の数は2倍ある. 電子線は, 奇数番目の走査では左の方向から, 偶数番目の走査では右の方向から試料に入射する. 奇数番目の走査の2次電子像を左のCRTに, 偶数番目の走査の像を右のCRTに表示する. これら2つのCRTを立体鏡で観察することにより, 対象物がリアルタイムで立体視される. あるいは, 2つのCRTを直交するように配置して, それぞれの前面に偏光板を置き, 両画像をハーフミラーで合成して, これを偏光眼鏡で観察しても, 立体視できる. 今回開発した装置では, 光角を最大9.6°まで取ることができる. なお, ほゞ対象物の3次元像に近い形状が認識されるときの光角は, 約6°である. 微細物質の3次元形状をリアルタイムで立体視できるようになった結果, その形状を定量的に計測する要求が出てきた. このためのアルゴリズムを開発するための前段階として, 3次元形状の認識の問題をコンピュータ・グラフィックスを使って検討した. 陰影図や透視図に較べて, 立体視による対物の3次元形状の観察では, 形状の誤認識が極めて少い. しかし, 特殊な条件下では, 形状の誤認識が生じる. このことから, 立体視による3次元形状の認識にも学習効果が大きく影響していることが判明した.
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