研究概要 |
皮膚病変の病理組織標本において, その病変の約90%は表面からおよそ3mm以内に含まれている. 従って, 超音波でこれを検出しようとする場合には, 表面から5mm程度の深達成があればよいことになる. 本研究では25,40および60MHzの高周波超音波プローブと周波数可変の発振回路を試作し, 近接部位での音場の乱れ, 画像作製に適した距離と充填物の選択, 安全性を考慮した周波数/出力比などを検討し, その上で, 正常および病的皮膚, 可視粘膜の超音波断層像を求めた. ついで, 病変部を切除してふたたび超音波断層像をもとめ, これらを病理組織学的所見と対比検討した. その結果, 角層の厚い手のひら, 足のうらの皮膚での表皮・真皮間境界, 頭髪ないしうぶ毛の毛包, 毛髪の断層像の抽出に初めて成功した. さらに表在性上皮性腫瘍や嚢腫, 炎症性細胞浸潤, 浮腫などの超音波所見と病理組織学的所見との対比を行い, また, 悪性黒色腫の組織学的浸潤度の生体計測への応用を試みた. 今後は分解能の向上, 60MHzプローブでの多重エコーの解消など, 検討すべき問題は多く残されてはいるが, 高周波超音波診断装置の開発により無侵襲皮膚病理組織学への第一歩を踏み出すことができたと考えられる.
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