研究概要 |
腫瘍の染色体変化が癌遺伝子の活性化に重要な役割を果たすことが明らかになり、この分野の研究が癌研究において重要な意義を持つようになった。過去3年間に細胞遺伝学者を中心に手技の交換を試み、将来の研究に一応の見通しを得、分子遺伝学者との協力体制も確立した。本研究では種々の腫瘍のマーカー染色体に焦点を絞って、in situ分子雑種法,細胞雑種法を用いて、転座と癌遺伝子の活性化機序を明かにした。各自の研究成果は以下の通りである。 〔杉山〕K3D株のrDNA-abl,D5A1のHras転座と癌遺伝子活性化との関係を解明した。〔高木〕【Ph^1】転座を有するCML,B細胞系を用いて、abl転座,発現の関係を解明した。〔及川〕組替え型,非組換え型のc-mycを持つマウス形質細胞種のc-mycの発現機序を解明した。〔中込〕小児癌の癌遺伝子発現と染色体異常の関係を究明した。〔大野〕マウスの形質細胞腫での非定型的転座の意味を解明した。〔阿部〕リンパ腫と骨髄性白血病の染色体変化を解明した。〔翠川〕間葉系長期培養株の増殖因子の自家分泌機構を解明した。〔古山〕AT,XP患者の繊維芽細胞にSV40等のウィルスDNAをトランスフェクトさせ、遺伝子発現を検討した。〔白石〕Bloom症候群の癌遺伝子の発現を観察した。〔植田〕増殖因子の存在下の化学発癌物質の作用と癌遺伝子との関係を見た。 以上のように、癌遺伝子の発現に関する分子遺伝学的な研究と癌細胞の染色体異常の相関に関する研究が、各自の実験系において、平行して実施されるようになってきた。ことに、杉山,高木,及川,中込,阿部,古山の各グループにおけるin situ分子雑種法の染色体マッピンクグの成功は今後の本研究班の活動にとって極めて、有力な武器になると思われる
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