研究概要 |
がんの温熱療法を臨床面に有効に応用するためには、大きな問題点である熱耐性を中心に次の研究を行った。(1)細胞レベルにおける熱耐性の生物学的特性を調べた(馬嶋ら)。熱効果の大きさと熱耐性の大きさの関係を調べ、熱処理が大きいと熱耐性は大となった。また熱耐性の消失は指数函数的に起った。異なる細胞系における熱耐性を調べ、熱に対して抵抗性を示す細胞ほど発現する最大熱耐性は大であることを示した。又、細胞周期と熱耐性との関係を検討し、熱耐性の発現および消失はCell cycly specificでなく、どの細胞周期のPhaseでも起こることがわかった。(2)Heat Shock Protein(HSPs)に関する研究:大塚らは、マストサイトーマ細胞で、分子量100,85,65,68,32,30,23KDa(3ケの23KDa)の9つのHSPsを見た。又、HSP70は、細胞骨骼系と関聨していた。HSP70は、螢光抗体法で染色して見ると正常温度では細胞後、核はうっすらと染色されるが、加温するととくに核小体に蓄積してくることが見られた。畑山らは、ラットにおける全身加温及び種々の処置によるHSPsの誘導について調べ、HSP70,71,85,100の4種が見出された。永田らは、従来知られているものにHSP47がニワトリの胎児線維芽細胞に存在することを見つけた。しかも転換細胞におけるHSP47の合成量は、正常細胞のそれに比べて半分以下に低下していることを見た。(3)培養細胞における薬剤の熱耐性の修飾について調べた。安徳らは種々の膜作用物質を用い熱効果増強を示し、田中らはセファランチンが熱耐性の阻止をすることを見た。サイクロヘキシミドは比較的低温、長時間加温に対し温熱防護効果を示した。(4)坂本らはシスプランチンを用い、低pHで制癌効果増強が更に増すことを見た。(5)田中らはIn vivoで、グルコース投与により熱感受性の増加と熱耐性の低下を見た。
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