研究概要 |
白血病発症系AKRマウスを致死線照射後、異系マウス骨髄細胞で再建した。このような骨髄キメラには移植後種々の頻度でdonor由来の胸腺腫、白血病が観察された。1.完全異系H-2不適合骨髄キメラ:BALB/c,C57BL/6,C3H/HeNをdonorとした場合BALB/cの場合のみ、約40%の頻度で白血病が認められた。又、上記3系統のマウス骨髄細胞を混合して移植すると、宿主AKRの60%に白血病が発症したが、全てBALB/c由来であることが判明した。これらはLyt2,L3T4表現型には一定の傾向が見られなかったが全てecotropic virus(+)であった。以上の結果よりBALB/c幹細胞には、AKRの環境下で容易に白血病化する感受性因子があることが判明した。2,H-2適合キメラ:C3H,CBA,AKRをdonorとしたキメラを比較した。現在まだ移植後の観察期間が短かいために正確な白血病頻度は把握されていない。ただC3HとAKRの組合せで作製した4種のキメラの移植後早期の胸腺再建度の比較から、AKRが宿主の場合C3H宿主より1オーダー以上多くの胸腺細胞が回収されることが判明した。この事実から胸腺基質細胞が胸腺細胞数の決定因子となることが示唆された。3.H-2不適合キメラ[B1O→AKR]のT細胞抗原レセプター遺伝子の再構成:AKRをB1O骨髄細胞で再建した[B1O→AKR]と[B1O→B1O]同系キメラの胸腺細胞DNAを3種の制限酵素で切断し、α,β,γ鎖のRFLPを比較した。Runt様症状を呈した[B1O→AKR]の胸腺細胞は[B1O→B1O]と異なるパターンを示したが、健常[B1O→AKR]キメラのそれは同系キメラと同一であった。現在このRunt様症状を呈したマウス胸腺細胞がPre-leukemic stageにあるものかどうか検討中である。 今回は一部を除き、がん特研究費の配分決定直後から研究がスタートしたために、長期の観察が完了していない。今後donorマウスを吟味し、GIX関連抗原等の検索を進めたい。
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