研究概要 |
ある種の細胞増殖因子がイノシトールリン肥質代謝の亢進も介してその作用を発現していること、インシュリンやEGFの受容体がホスファチジルイノシトールキナーゼ活性を持つこと、さらに発癌遺伝子産物の多くがイノシトールリン肥質に関与するキナーゼ活性を持つことなどから、細胞増殖や発癌にイノシトールリン肥質代謝が密接に関係していることが明らかとなってきた。細胞増殖因子受容体およびSTC family の発癌遺伝子産物がいずれもチロシンキナーゼ活性を持つことが証明されており、チロシンキナーゼ活性とイノシトールリン脂質代謝関連キナーゼとの類類性が想像される。そこでイノシトールリン脂質代謝関連キナーゼを精製し、発癌遺伝子産物や細胞増殖因子受容体との類似体を明らかにしようとした。本年度はホスファチジルイノシトールキナーゼの精製を主に行なった。ラット脳上清画分より、Attigel-Blue,DEAE-Biogel,SephacryI S・300,ATP-attinity クロマト,MonoQカラムクロマトを行ない、電気泳動的にほぼ単一にまで精製した。分子量12万で、比活性は1250倍に上昇した。Km値はATDに対し294μMで、ホスファチジルイノシトールに対して100μMであった。至適PHは7.0で活性に【Mg^(2+)】を要求した。基質としてはホスファチジルイノシトールのみをリン酸化し、ホスフアチジルイノシトール4-ホスフェイト、ジアシルグリセロールはリン酸化しなかった。また、精製の過程でホスファチジルイノシトールキナーゼには少なくとも4種類存在し、分子量は40万,30万,16万,12万であることをみつけた。更に現在、これらの精製を続けている。
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