研究概要 |
本研究においては、モノクローナル抗体で認識される癌組織・癌患者血清中のムチン様糖蛋白質を、その糖鎖構造から1型糖鎖と2型糖鎖とに分類した。1型糖鎖は、GalBl→3GlcNAcの結合を基本型とするもので、これをフコースやシアル酸が種々の結合様式で修飾するものである。1型糖鎖に属する抗原で今回検討を加えたものは、2→3シアリル【Le^a】(N19-9),2→6シアリル【Le^a】(FH-7),2→3シアリル【Lc_4】(C-50),2→3,2→6ジシアリル【Lc_4】(FH-9),【Le^a】,【Le^b】の5種である(カッコ内はこれらの抗原と認識するモノクローナル抗体)。2型糖鎖は、GalBl→4GlcNAcの結合を基本型とするもので、これをフコースやシアル酸が種々の結合様式で修飾するものである。2型糖鎖に属する抗原で今回検討を加えたものは、SSEA-1,ポリフコース,シアリルSSEA-1,フコシルSSEA-1の4種である。1型糖鎖抗原のうち2→3シアリル【Le^a】,2→6シアリル【Le^a】,ジシアリル【Lc_4】抗原の各種癌患者血清中の出現頻度を図1に掲げた。いずれの抗原ともに各種消化器癌で高値となる症例が多く、時に2→3シアリル【Le^a】と2→6シアリル【Le^a】は膵癌での陽性率が高かった。癌患者全体では2→3シアリル【Le^a】の陽性者が、 名中 名( %)よりも高い陽性率を示した。一方、非癌良性疾患での偽陽性率は2→3シアリル【Le^a】では 名中 名( %),2→6シアリル【Le^a】では 名中 名( %)であり後者の方が高い陽性率を示した。このような検討を1型,2型糖鎖抗原について行ない、糖鎖構造の違いによって癌性ムチンの出現頻度、癌スペクトラム、癌特異性が法則的に変化することが見出された。
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