研究概要 |
Capizzi療法は、アスパラギナーゼがメトトレキセートの正常組識への毒性を抑制することを利用し、メトトレキセートの大量投与を可能とした癌療法である、本年度は、アスパラギナーゼによってメトトレキセート以外の抗癌剤の毒性が抑制されるか否かを検討するとともに、抗癌剤毒性減弱機構の解明を試みた。マウスに対する抗癌剤の【LD_(50)】や抗癌剤の毒性が著明に現われる小腸粘膜の酵素活性(ジアミン酸化酸素、DAO)を指標に抗癌剤の毒性を検討したところ、アスパラギナーゼは、メトトレキセートのみならず5FU,シトシンアラビノシド,6-メルカプトプリン,アドリアマイシン,シスプラチン,マイトマイシンCなど10種の抗癌剤やX線照射による毒性をも抑制することが判明した。またアスパラギナーゼの投与量を変化させた研究から、組織アスパラギンの涸渇が毒性抑制に関連していることが推察された。また、アスパラギナーゼの他に、フェニルアラニンを分解するフェニルアラニンオキシダーゼ,ヒスチジルtRNA合成酵素の阻害剤であるヒスチジノール,リボソームレベルの蛋白合成酵素剤としてよく知られているサイクロヘキシミドも、上記多種類の抗癌剤の毒性を抑制することがわかった。従って、アスパラギナーゼの抗癌剤毒性抑制作用には、蛋白合成の抑制が関与していることがほぼ明らかとなった。 本年度の成果からCapizzi療法はメトトレキセートとアスパラギナーゼに限って考える必要はなく、メトトレキセートの代りに、5FUやシトシンアラビノシド,メルカプトプリンが、また、アスパラギナーゼの代りにフェニルアラニノキシダーゼ,ヒスチジノールなども用いうる可能性を示すことができたと考えられる。
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