研究課題/領域番号 |
61015064
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高井 義美 神戸大, 医学部, 教授 (60093514)
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研究分担者 |
山下 孝之 神戸大学, 医学部, 助手 (10166671)
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研究期間 (年度) |
1986
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研究課題ステータス |
完了 (1986年度)
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配分額 *注記 |
13,600千円 (直接経費: 13,600千円)
1986年度: 13,600千円 (直接経費: 13,600千円)
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キーワード | 細胞増殖因子 / 発癌プロモーター / プロテインキナーゼ / ジグリセリド / カルシウムイオン / サイクリックAMP / 癌遺伝子 |
研究概要 |
最近、癌遺伝子やその産物が細胞増殖因子やその受容伝達機構と関連して細胞の増殖制御や癌化の過程に関与していることが明らかにされている。私共は細胞増殖因子と発癌プロモーターの細胞膜受容伝達機構、とりわけCキナーゼと【Ca^(2+)】を介する受容伝達機構の解析を行っている。本研究では、これらの伝達機構がc-mycとc-fos遺伝子の発現やDNA合成の制御に果たす役割についてSwiss3T3細胞と血管平滑筋細胞を用いて解析した。Swiss3T3細胞ではPDGFやFGF等の細胞増殖因子はイノシトールリン脂質代謝を促進してジグリセリド-Cキナーゼ系と【Ca^(2+)】系の2つの伝達系を活性化し、c-mycとc-fos遺伝子のmRNAを増大させた。また、プロスタグランジン【E_1】はcyclicAMP系と【Ca^(2+)】系を介して、EGFはこれらの伝達系とは無関係にc-mycとc-fos遺伝子のmRNAを増大させた。さらに、Cキナーゼ,【Ca^(2+)】,cyclicAMPの3つの伝達系は互いに非依存的にこれらの遺伝子の発現の制御に関与していた。一方、発癌プロモーターの1つであるホルボールエステルは直接Cキナーゼに作用してc-mycとc-fos遺伝子のmRNAを増大させたが、大腸癌の発癌プロモーターである胆汁酸はCキナーゼには直接作用せず、FGFによるジグリセリド産生に対する細胞の感受性を高へて、間接的にCキナーゼの活性化を亢進し、DNA合成を促進した。このように、Swiss3T3細胞ではCキナーゼの活性化は細胞増殖過程に促進的に作用する。一方、血管平滑筋細胞ではCキナーゼは細胞周期の【G_0】期/【G_1】期移行に促進的に作用するが、本酵素はそれ以外に【G_1】後期からS期への進行に対して抑制的に作用した。以上、本研究で私共は、細胞の増殖や癌化に果たすCキナーゼの役割には癌遺伝子を活性化して細胞増殖を促進する作用と、細胞にフィードバックをかけて増殖を抑制する作用のあることを証明することができ、本年度の研究計画はほぼ予定通りに達成することができた。
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