研究概要 |
本年度は(【I】)未熟胸腺細胞中の細胞傷害性T細胞(CTL)の前駆細胞から抗原インターロイキン2(IL-2)存在下にCTL生成を補助するキラーヘルパー因子(KHF)の精製、【II】マウス慢性B白血病(【BCL_1】)細胞をIgM産生細胞に分化させるTcell-replacing factor(TRF)がKHF活性をも発揮することを明らかにした。 (【I】)結核菌感作細胞をPPDで刺激後、BW5147細胞と細胞融合させKHFのみを産生するクローン(2Y4)を選択した。2Y4上清よりKHFを精製すると、2Y4KHFの分子量は36,000〜60,000、等電点4.6〜4.7で胸腺細胞にIL-2レセプターを発現させる活性のあることを見出した。精製2Y4-KHFはIL-1,IL-2,IL-3,IL-4,【IFN_γ】活性は示さなかった。我々の実験系でIL-1はIL-2と共に胸腺細胞に作用しIL-2レセプターの発現を高めるが、CTL生成は誘導しない。多分KHFはCTL前駆細胞に作用し、IL-1はヘルパーT細胞の前駆細胞にIL-2レセプターの発現を高めるのであろう。(【II】)我々は【BCL_1】細胞に作用しIgM産生細胞に分化させるTRFを構成的に産生する。T細胞融合株B151K12を樹立しその上清よりTRFを精製した。その過程でB151-TRFが抗原刺激された未熟胸腺細胞に作用し、IL-2レセプターを発現させると共に、KHF活性を示すことを見出した。B151-TRFの示すKHF活性は単クローン性抗TRF抗体により阻害されること、B151培養上清中のTRFおよびKHF活性は抗TRF抗体結合アフィニティカラムに吸着し酢酸により溶出されることを明らかにした。さらに【TRF_c】DNAをクローニングしその全構造を決定したが、リコンビナントTRFがKHF活性を示し、抗TRF単クローン抗体がリコンビナントTRFのKHF活性を阻害することを明らかにした。興味あることに、2Y4-KHFの活性は抗TRF単クローン抗体により阻害されないことにより、KHFには物性の異なる2種類のKHFが存在することが示唆された。それぞれのKHFのCTL生成における役割を現在更に解析中である。
|