研究分担者 |
平林 順一 東京工業大学, 工学部, 助手 (30114888)
松尾 禎士 東京工業大学, 理学部, 教授 (30015490)
大隅 多加志 東京工業大学, 理学部, 助手 (60114857)
金成 誠一 北海道大学, 理学部, 教授 (70027233)
日下部 実 岡山大学, 地球内部研究センター, 教授 (20015770)
|
研究概要 |
1986年10月5日-21日の間、カメルーン・ニオス湖ガス噴出災害に関連し、周辺地域を含めて地学的調査研究を行なった。ニオス湖および、1984年に同様のガス災害を起した、マヌン湖および比較としてウチ湖(いずれもカメルーン火山列の火口湖)の各深度のCTD測定,採水,現地における滴定等を行なった。災害を生じた2つの湖水は類似した特徴を示し、顕著な成層構造を残しており、【HCO_3】および遊離炭酸、Mg,Fe,Ca,アルカリ等に豊む。特にニオス湖水は飽和時の約20%の【CO_2】を含み、災害発生時、飽和状態に近かったものが、何らかの引き金により反転し、数時間以内に大量の【CO_2】ガスを放出したというモデルを支持する。水温は、10m以深徐々に増大するが、その変化は断熱状態における脱ガス時の冷却効果の計算見積りと一致する。脱ガスは各深度において複数の対流セルが生じ、深所から湖水面へ向って、段階的に起きたと考えれば、測定当時保持されているような、成層構造の説明は可能である。湖岸にみられる、最高80mにおよぶ、水波による侵食作用は脱ガス時のじょう乱によるものと考えられる。脱ガス量は、飽和を仮定すると0.63【Km^3】であり、地形と死者の分布から求められる、ガス流下のモデルを満足させるに充分な量となる。マヌン湖水の特徴もニオス湖と類似するが、ウム湖水は【CO_2】も陽イオン類も含量がきわめて少く、前2者の特異性を指示している。この地域は新期単成火山群が広く分布し、多類のスコリア【II】,マール,サージ堆積物,溶岩流が見られ、【CO_2】の火山性起源を支持している。岩石は弱乃至中程度のアルカリ岩系に属し、ベイサナイトが約半分、かんらん石玄武岩が半分である。ニオス湖畔で行った地震観測では、微小地震を含め全く観測されなかった。両湖水の低いS含有量は、有毒ガスとして【H_2】S,【SO_3】の存在を疑わせるもので、皮ふ火傷の多い報告との関係の説明が困難である。
|