研究概要 |
北海道のオホーツク海沿岸には毎冬1月に流氷が現われ、接岸と離岸とを繰り返しながら4月頃まで滞在する。その間に流氷の一部は宗谷海峡から日本海に抜けて利尻・礼文島に達したり、根室海峡を通って太平洋に流出して道東太平洋岸から襟裳岬に達したりする。このような流氷の挙動によって船舶被害,水産物被害,海洋構造物被害などの流氷災害が発生するが、その事例の大半は岸の影響を強く受けて局所的に複雑な動きを示す沿岸海域で起こっている。本研究の目的は、流氷レーダのデータの蓄積や人工衛星画像などを用いて、沿岸海域における流氷の挙動を明らかにすることである。 1.流氷レーダによる沿岸流氷分布の統計解析 低温科学研究所付属流氷研究施設での流氷レーダ観測は、1969年冬以来毎日朝9時の流氷分布図が資料として印刷されている。流氷分布情報を将来データベース化する場合のための基礎研究として、この流氷分布図を用いて、調査海域の大きさに対する単位空間の大きさ,時間間隔,情報量などはどの程度が適当か、またどの程度まで粗くできるかを調べた。オホーツク海岸の枝幸の北から斜里までを10Km毎位の約20区間に分け、沖合20,40Kmまでの氷量を5段階で表現した。流氷期間中の推移を追うと、接岸・離岸時の流氷挙動を見ることができ、風に対する応答特性を調べることができた。 2.衛星写真を用いた流氷挙動の事例研究 ランドサットや気象衛星の写真画像を用いて、流氷野の漂流や変形を調べた。ランドサットでは翌日の隣の軌道の写真との重複海域内で一昼夜の間の氷盤の破壊の姿を知ることがでた。上空の雲の筋から風の場を知り、氷縁付近の流氷のパターンとの関係を求めた。 得られた知見は、さらに解析を加えて今秋の自然災害科学会で発表し、「低温科学」に印刷公表する予定である。
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