研究概要 |
東北地方における夏季の大気の鉛直状態について検討し、逆転層の存在からヤマセ地帯の高地を草地として活用することが有効であると考え、八甲田山頂付近(1,400m)の観測結果からもこの点を明確にした。山地の草地化を目ざすには、人里近く海抜高度の低い方が営農的には有利な面が多い。そこで、下北半島の燧岳(781m)の南から東に広がる佐藤ケ平と呼ばれる緩斜面で、ヤマセ時に生ずる大気の逆転層の影響を明らかにするための観測を行なった。気温は地上1.5mの高さで測定し、データはメモリーセンサー(MES-801型、小糸工業)に集録した。ヤマセ時の日最低気温はA地点(600m)が最も高く、斜面の中間にあるB地点(300m)が低くなる傾向が認められるが、日最高気温は、18,21,25日の3日だけが高度が高いほど気温は低くなることが明らかだが、他の日について、高度と気温の関係は明らかではなく、ヤマセ時・特有の逆転層の影響が認められる。冷害時には、1,500mの高度で一ないし二層の逆転層が認められることについて報告したが、今回、検討されているのは、この場合の下層の逆転層であり、この高さは200〜600m付近であり、出現する頻度は高く、ヤマセ日(三沢における地上気温20℃以下、風向が東寄り)のほとんどの日に認められる。そして、三沢における地上気温と石持(C地点)の間には強い相関関係が認められ、三沢におけるラジオゾンデの高度600,300mの気温とA、B地点の気温も良く対応している。こうした、下層の逆転層の存在は冷害時に津軽半島で南北に連らなる500m近い山塊(津軽山地)の東側と西側で水稲収量が大きく異なることを裏づけるものと考えられる。これらの例のようにヤマセ時の低温の気流は極めて低い位置にあることが明らかであり、この地域の山地開発にあたり気象条件を指定する場合には十分に活用されるべきである。
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