研究概要 |
我国の都市防災対策においては、大地震時の同時多発火災と市街地大火に対処するため、東京都をはじめとして多くの都市で広域避難場所を指定している。しかし、既成市街地では公園等の既存施設に頼らざるを得ないが、現行の指定基準は火災からの安全距離等を考慮した有効面積と1人当り必要面積(一般に、1【m^2】1人が標準)のみによっている。広域避難場所は、たどりついた避難者を円滑に、かつ安全に収容しなければならない。東京都では総面積数10ha,収容予定人員数10万人という巨大な避難場所が数多くあり、これらの大規模避難場所では、数kmという長距離を歩行して到着した避難者が入口附近に密集,滞溜し、後続の避難者が入り込めないことも考えられる。 以上の視点から、本研究においては、屋外の大規模集会等の観測から群衆分布の特性を分析し、避難場所内の群衆分布に関する各種パラメーターを設定した上で、避難場所内群衆分布モデルを開発した。このモデルを用いて、時々刻々到着する避難者の数,属性,火災の状況等を入力データとして収容可能性を分析し、広域避難場所の入口条件,植栽計画等の設計条件を摘出した。 研究の実施にあたって、はじめに仮想的な避難場所を設定しモデルの整合性の検討,パラメーターの感度分析をおこなった。つぎに、東京区部の137ケ所の広域避難場所から文京区六義園をケーススタディとして選定した。各種の計算実験の結果、(1)入口はできだけ分散すること、(2)入口が集中している場合には、誘導柵等を設け、避難者を避難場所の奥に引き込むこと、(3)滞溜可能な場所は、避難場所の中央に設けること、等が収容入口の増大につながることが指摘された。また、今後の課題としては、各種パラメーターとアルゴリズムの精緻化があげられた。
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