研究概要 |
岡山県を中心とする瀬戸内地域には、古来用水源確保のため多数のため池があるが、その殆どが、瀬戸内地域特有のマサ土で築造されている。この研究は昭和60年、61年に発生した、マサ土中心にしたため池の災害調査、解析を行い、その発生原因と、対策を考じようとするものである。 災害地区を岡山県から2例(六谷池,不老の谷池)、広島県より2例(かくれため池,本家池)、山口県より2例(野口池,昭和ため池)選び、現場密度・現場透水・弾性波探査・貫入試験等を行った。さらに、堤体材料の室内物理的・力学的試験および長期室内透水試験を行い、これらのデータを入力条件として安定解析,浸透,変形に関する数値解析を行った。 この結果、殆どの堤体は、密度は大で、透水性は小さいが、部分的に、非常に大きい透水性のゾーンが見られた。それらは赤褐色に変色しており、長年にわたる水みちの形成と漏水の定常化が見られ、現場透水試験から、これらは、単に堤体内だけでなく、基礎地盤にも存在すると思われた。長期室内透水試験の結果、透水係数は、マサ土以外の土は、時間の経過と共に減少するが、マサ土は、かえって、一時増加した。安定解析による安全率は1.1以上あり計算上安定しているが、有限要素法による応力変形解析に基づく点安全率は部分的に小さい箇所が見られた。飽和ー不飽和浸透流解析によると、殆どのため池は、1-2日で飽和状態に達し、下流斜面に漏水が生ずることになる。したがって、崩壊は、このような水みちあるいは漏水箇所の部分的な崩壊が波及的に広がったものと思われる。以上のことから、漏水を注意深く観察し、漏水があるときは早急に、ドレーン工などで処置すれば、破堤の端緒となると思われる部分的な崩壊を、防ぐことができよう。
|