研究概要 |
1)アニオン型重金属の土壌中における行動:アニオン型重金属のうち環境中に放出される量がもっとも多く、かつ有機物の分解に影響を与えるとともに自らは還元をうけ、植物や微生物への影響も変化するクロム酸をとりあげ、両者の関係についてしらべた。すなわち分解性(還元能力)をことにする有機物のモデルとしてグルコース,デンプン,セルロースを用い、有機物分解の指標として土壌呼吸を測定したところ、クロム酸によって土壌呼吸は一たん抑制されたのち回復に向うが、そのはやさはグルコース添加の場合がもっとも早く、ついでデンプン,セルロースの順であった。またクロム酸の還元による消失もグルコースでもっとも早く、デンプン,セルロースの順で、クロム酸の消失と土壌呼吸の回復とは時期的にほぼ一致した。2)アニオン型重金属の土壌微生物活性ならびにフロラにおよぼす影響:アゾトバクター(有用),フザリウム(有害)両微生物に対する抑制効果をみたところ、モリブデン酸,バナジン酸がもっとも弱く、クロム酸がもっとも強かった。ところがタングステン酸はアゾトバクターの生育にはほとんど影響しないのに対して、フザリウムの場合は濃度の増加に比例して生育を著しく抑制した。また土壌微生物相に対する影響をみたところ、モリブデン酸,タングステン酸,バナジン酸では大きな変化はなかったが、クロム酸の場合は細菌数の減少によるB/F値の低下,放線菌の著しい減少がみられた。3)アニオン型重金属の植物による呼収と生育への影響:これまで知見のなかったタングステン酸の呼収様式について検討し、植物はモリブデン酸とタングステン酸を区別せずに吸収することを明らかにした。また水稲の種子根伸長阻害を指標にして重金属アニオンの毒性を比較した。その結果栄養塩の有無で傾向は異なるが、栄養塩の共存下ではクロム酸>バナジン酸≒タングステン酸>モリブデン酸の順であった。
|