研究概要 |
瀬戸内海における植物プランクトン,海中懸濁物,海中沈降物,海底堆積物,動物プランクトン,ベントス,魚類の各要素中でのアミノ酸組成を調査し、低次生物生産過程におけるアミノ酸の動態を主として栄養学的な面から明らかにすることを目的とした。その目的達成のため、今年度は新たにベントス(エビ類,多毛類,貝類,ウニ類)と魚類(カタクチイワシ)のアミノ酸組成を測定し、これで総ての要素が一応揃ったことになる。海水中の粒状アミノ酸の一般組成は全体的にどの要素においても類似したパターンを示したが、海中懸濁物,海底堆積物のアミノ酸組成は最も偏が大きく、肉食傾向を示す魚類、エビ類のアミノ酸組成は比較的均一となった。植物プランクトンからカタクチイワシに至るまでの食物網を想定し、各生物間での食う-食われるの関係を必須アミノ酸指数(EAAI)を指標として求めた。この値が高いほど(最高:100)良質の餌と孝えられる。一般に栄養段階が上昇するにつれてegg proteinに対するEAAIが増大する傾向があった。また従来好適な餌とされていた物の捕食者に対するEAAIは高い値を示した。例えば植物プランクトンSkeletonema costatumはカイアシ類に対してEAAI90を示し、カイアシ類はカタクチイワシに対してEAAI86を示し、いずれも従来の食物連鎖が栄養的にも妥当であることを裏付けた。ベントスに対する海中懸濁物,カイアシ類の糞粒,海底堆積物はEAAI50以下の低い値であり、海中沈降物のEAAIは79で、良い餌となることが判明した。食う-食われるの関係が明らかでない生物間を、今後餌生物と捕食者のアミノ酸組成を測定することにより、栄養的な面から明らかにすることが可能である。
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