研究概要 |
本研究は、閉鎖系水域である霞ケ浦を調査区域として、除草剤CNP(クロロニトロフェン;4-ニトロフェニル 2,4,6-トリクロロフェニルエーテル)の環境への流出、蓄積,生物への移行を測定することによって、農薬の環境へのインパクト,人間へのリスクを評価しようとするものである。前年度の研究で、霞ケ浦へ流入するCNPの量は、流域内での使用量のほゞ0.05%に相当し、環境中での半減期は3年であると算出された。これらが生物体内に移行する状況を知るために、霞ケ浦へ流入する河川の一つである桜川について、河川水,底泥,生物体中のCNP濃度を4月から9月まで測定した。生物検体としては、タニシとブルーギルを選んだ。タニシにもブルーギルにもCNPは高率で濃縮された。タニシの場合は、水中のCNP濃度に敏感に対応するが、ブルーギルの場合は水中のCNP濃度が下っても、数ケ月間は魚体内中CNP残留値はかなり高い値が持続する。ブルーギルの場合の生物濃縮比(ブルーギル中のCNP濃度、湿重量/水中CNP濃度)は、ブルーギル中のCNP濃度として総CNP,水中のCNPとしてニトロ体CNPをとったとき4000位、ブルーギルも水もニトロ体CNPをとった時は、2000位であった。霞ケ浦の魚介類についてもCNP残留状況を調べたところ、テナガエビ,自生の鯉,シジミなどについてCNPが検出されたが、河川に比べると低い値であった。季節変動について調査する予定であったが、十分な調査ができなかった。以上の結果を基に人の攝取量の推定を行ったところ、4月〜6月水道水によるものが0.2μg/人日、すべて川魚を食するとしたときの魚からの摂取量は、5月〜8月の期間40μg/人日であった。水道水経由より、魚経由の方が人間に与える影響は大きく、魚による分は、ADI(一日許容攝取量)の40%に相当する。湖内底泥中に蓄積したCNPの影響について調査が必要。
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