研究概要 |
昭和61年度には元安川の6測点における総合調査3回と、定点における25時間連続観測3回を行った。その他補助的なフィールド調査とデータ解析を助けるための室内実験を行い、また放水路について数値実験と理論計算を試みた。総合調査ではSTD,DOメータ,濁度計による鉛直分布の測定と、採水による塩分,DO,栄養塩類,溶存および懸濁態の全窒素と全リンクロロフイルa,尿素,ATPなどの測定をした。また、流下藻類,海産性植物プランクトンの調査を行った。たらに、底質について有機物量や微生物調査を行った。定点では流速,塩分,温度,DO,濁度の連続観測と2時間ごのと採水・分析を行った。懸濁物量も栄養塩類濃度もほぼ塩分と逆相関を示すが、塩分1〜3%で大きなズレが見られた。有機態窒素は上流水門から河口近くまでは塩分と逆相関になるが、河口域では再び増大した。プランクトンの分布とクロロフィルa,ATPの分布との間にも相関のある部分とズレのある部分とが見られた。これらの流況,水質,底質,プランクトンなどのデータを使って物質収支を見た。元安川において比較的安定した冬季の窒素収支は次の通りである。大芝水門から1潮時に溶存無機態窒素は370kg供給され、河口から海へ出るのは18kgである。この減少は川岸や川底の付着藻類,流下藻類,海産性植物プランクトン,細菌などによる吸収,利用,吸着と考えられる。これらの栄養塩類の挙動は室内実験の結果とよく対応しており、アンモニアについては粒子への吸着,沈降,除去が主と考えられる。溶存有機態窒素は下げ潮時には流下するに従って増大する。これは細菌による有機物の分解と流下藻類,植物プランクトンからの溶出による。1潮時でみた時には、流下中に減少しており、海水との接觸による溶存有機物の凝固,沈殿によるものである。これらの研究の成果を報告書(環境科学研究報告書B-315)にまとめた。
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