研究概要 |
迅速,安価,簡便の条件を満たす発生毒性検索系の1つとしてアフリカツメガエルの胚および幼生を用いる方法の確立をめざした。検索には各化学物質を種々の濃度で含む水溶液中でアフリカツメガエル胚を胞胚期,嚢胚期あるいは孵化直後の幼生期から摂餌開始前の幼生期まで発生させ、死亡と異常の用量-効果関係および出現する異常の型を調べるという方法を用いた。試験液の作製に備品として購入した蒸留水製造装置を用いて得られた水を使用した。検査した全ての化学物質で何らかの発生障害が観察された。発生障害を引き起こした最小曝露濃度は硝酸鉛:0.1mg/l,エタノール:4%,塩化第二水銀:0.25mg/l,カフェイン:100mg/l,ヒドロキシ尿素:500mg/l,臭化エチジウム:100mg/l,溶性サッカリン:100g/l,アセトン:8%であった。臭化エチジウムと溶性サッカリン以外の6物質で致死と異常が濃度に対応して出現し、特に硝酸鉛,カフェイン,ヒドロキシ尿素では用量-効果反応が明瞭に示された。さらに、カフェインで最も典型的に示されたが、形態異常についてもその強度が濃度に対応するものがあった。硝酸鉛で発生障害を引き起こした最小曝露濃度と出現した異常は、我々が以前に検索した酢酸鉛のものとほとんど同様であり、その作用が鉛によるものであることが支持された。これらの結果は環境化学物質の発生毒性検索系の1つとして、アフリカツメガエルの胚および幼生を用いる方法の有用性を強く支持している。なお、今回哺乳類における催奇形物質のみならず、通常の試験では催奇形性がないとされている溶性サッカリンや催奇形性が未確定のアセトンにおいても発生障害が出現したが、その濃度はそれぞれ100g/l,8%と極めて高かった。今後さらに多くの非催奇形因子および催奇形因子を検索することにより、化学物質の発生毒性に関し、この系における評価の基準を確立する必要がある。
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