研究概要 |
1.降水中のトリチウム濃度:秋田市の1986年の平均値は37.2pCi/lで、85年の40.1pCi/lとほぼ一致した。86年5月7日以後の降水にはソ連チェルノブイリ原発事故の影響と思われる【^(131)I】,【^(103)Ru】,【^(132)Te】などが検出されたが、【^3H】は前年度の変動幅にほぼ収まり、影響がなかった。86年の【^3H】降下量は3.56mCi/【Km^2】となった。バックグランド水の八幡平・大沼地熱発電所の熱水は電解濃縮法で0〜2pCi/lであった。2.食品中のトリチウム濃度:秋田市内で食品群別に購入した食品分析では、各食品とも【^3H】濃度は比較的均等で、自由水に多い傾向も認めた。全【^3H】経口摂取量は自由水で1500±70mBg/日、組織結合で850±30mBq/日となっている。3.トリチウムの体内挙動:SD系ラット(雄,200g前後)に当重1g当り5μCiの【^3H】水を経口投与し、経日的に脱血致死させた後、重要臓機を摘出して超遠心機で細胞核、細胞質内小器官を分画し、各分画中の組織結合型【^3H】濃度を測定した。その結果、【^3H】分布は腎、肝にやや高く、脳に低い傾向を示すほか、各臓器ともサイトソール中の【^3H】濃度がミクロソーム、ミトコンドリアの約1/3程度と低くなっている。4.トリチウム投与母親マウスと胎子における骨髄小核の発現:ICR系マウス・(12〜14週令)を交尾させたのち、妊娠第1日目のマウスに【^3H】水5,15,30,60,120μCi/gを1回腹腔内注射し、曝露6,9,12,18,24,30時間目および13,15,17日目の母親の骨髄小核および胎仔肝の小核含有赤血球の発生頻度を求めることにした。本実験に先立ち、マウス全身のX線照射(電子線治療リニア・アクセレータ,10MeV,300rad/秒)をターゲットから100cm離して0,25,50,100,150radで同様に母親と胎仔の頻度を算出した。その結果、照射初期では胎仔が母親に比べ影響が大きいが、その後、母親の小核発現頻度が強く現われることが明らかとなった。
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