研究概要 |
〔目的〕トリチウムβ線(5.7KeV)とそのエネルギー類似の鉄,チタン特性X線(6.5,4.6KeV)照射によるヒト線維芽細胞の致死効果から、トリチウム水の細胞線量補正係数を求めることにした。 〔方法〕ヒト線維芽細胞【10^5】を照射2日前に1.5μmマイラー膜底の自家製ディシュ(7【cm^2】にプレートし、鉄,またはチタン特性X線でメディウム存在下で下方から照射した。トリプシン処理後、適当数の細胞をコロニー生成まで15日間【CO_2】インキュベータで培養した。細胞のトリチウム水処理法,V79の処理,特性X線照射装置,線量測定は昨年度報告した通りである。 〔結果〕ヒト線維芽細胞のトリチウム水,鉄特性X線,チタン特性X線,リニアックX線(4MV)による生存率曲線を求めた。鉄特性X線,チタン特性X線,リニアックX線は、ほぼ同一生存率曲線を示した。しかも肩もほとんどないので、直線とみなすと、トリチウム水の細胞線量補正係数は0.7となる。逆に、細胞の含水率を70%と仮定すると、RBE=1.0となる。ヒトの細胞ではないが、昨年度はV79細胞で鉄特性X線とトリチウム水との比較で線量補正係数を求めた。今年度は確認のため、チタン特性X線によるV79細胞の生存率曲線も求めた。予想に反して、この生存率曲線は、鉄特性X線のそれと明らかに異なっている。従って、V79細胞の特性X線照射による線量補正係数を求めるのに、昨年度報告したように、単純に【^3H】β線と鉄特性X線のエネルギーがほぼ等しいから、生物効果が等しいと仮定するのは適当でなく、現在、放射線物理学的な面からも検討中である。
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