研究分担者 |
蟹沢 聰史 東北大学, 教養部, 教授 (70005784)
針谷 宥 北海道大学, 理学部, 教授 (50000815)
本間 弘次 岡山大学, 地球内部研究センター, 教授 (70033131)
森清 寿郎 信州大学, 理学部, 助手 (90115379)
山田 哲雄 信州大学, 理学部, 教授 (30020647)
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研究概要 |
昭和60年度では中部地方領家帯の木曽駒,新城,伊奈川という3つの花崗岩体について、花崗岩形成時の水の挙動の3つのパターンを定式化した。 1.今年度は北上山地の遠野,姫神の2つの花崗岩体について、角閃石,黒雲母を分離し、そのSD,【X_(Fe)】を測定し、この2つの岩体はそれぞれよく似た水の挙動を示すが、領家帯のものとは異なることが判明した。それは角閃石-黒雲母のペアはSD-【X_(Fe)】図の上で、Suzuoki-Epstein(1976)の実験式を満足させるいわゆる平衡型に属するが、【X_(Fe)】が小さくなるにつれてSDが軽くなるというパターンを示す。このことは領家帯がイルメナイト系列であり、北上山地が磁鉄鉱系列であることと関係しているかも知れない。もし、そうであるとすると、マグマの含水量や酸素のフュガシティと関係があるであろう。この理論的解釈は来年度の課題である。 2.乗鞍火山帯の焼岳について、その噴気の水,地表水のSDを測定した。また、ドームを形成する溶岩の角閃石,黒雲母を分離し、その【X_(Fe)】,SD,【Fe^(2+)】/(【Fe^(2+)】+【Fe^(3+)】),含水量を測定した。また、火山ガラスについても含水量,SDを測定した。その結果、噴気の水はマグマの水とは考えにくいこと、マグマの水のSDは領家帯の花崗岩マグマの初生的水と似て、-60o/ooであること、角閃石,黒雲母は溶岩中で熱せられて脱水,酸化していく過程で水が次第に重くなっていること、その脱水過程はレーリーで説明できること等が明らかとなった。 3.領家帯花崗岩と時代はほゞ同じであるが、より日本海側に分布する白川花崗岩(山陰帯の花崗岩に対比される)は、そのマグマの水が領家帯のものよりさらに軽いことが判明した。その理由は今のところ不明であるが、マグマの発生源であるマントルに起因するものかも知れない。
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