研究概要 |
われわれはすでに交感神経支配臓器の線維芽細胞が神経成長促進因子(NGF)を産生することやその産生量が交感神経支配が強い臓器ほど高い傾向を示すこと,さらにその産生量がカテコールアミンにより増大することを明らかにしている。そこで本研究はさらにNGFの産生量のカテコールアミンによる促進郊果の作用機序やどのような構造のカテコールアミンがNGFの産生に特に有効であるかを知るための構造活性相関,さらに生体内の生合成部位を明らかにすることなどを目的として行った。その結果,1;カテコールアミンのNGF合成促進郊果はアドレナリン作動性受容体を介さず,これらのアミン類が受動輸送機構で細胞内に取り込まれ作用を発現しているものと考えられる,2;構造活性相関についてはベンゼン環の3位の水酸基を水素やメトキシ基に変えると全く増強郊果がなくなること,側鎖に2つの飽和炭素をもつ34ジハイドロキシフェニル誘導体は強い活性を示すが飽和炭素の数が少なくなるにつれて活性が低下することから脂肪族側鎖が細胞内へのこれらの化合物の取り込みに大きく関係していることが考えられるなどカテコール環がNGF合成促進作用には必須であり脂肪族側鎖がその活性を増強している,3;アストログリア細胞がNGFを合成分泌していることを確認した。また脳のアストログリア細胞の真の合成産物であることはアクチノマイシンD,シクロヘキシミド存在下で培養した細胞培養液中ではNGFレベルが著しく低下することによっても確認した。4;アストログリア細胞の増殖とNGF合成量との相関についても調べたが培地中へのNGFの分泌量は細胞の対数増殖期に最も多く(〜400pgl【10^6】cells/day),血清除法培養下の静止期では最も少なかった(〜0.4pg/【10^6】cells/day)。すなわち合成はGo期には極めて低く細胞周期内へ移行すると発現されるなど興味ある知見を得た。現代は脳内で合成されるNGFのコリン作動性ニューロンの機能維持との相関の研究を考えている。
|