研究概要 |
本研究では、従来の細胞生物学的・生化学的方法を組み合わせてHGPRT完全、部分欠損症の診断法を確立し、家系例を用いてその限界を明らかにした。これらの疾患の診断,保因者の診断,出生前診断のためには遺伝子診断は是非必要な方法であったが、その第一歩として正常日本人のHGPRTの多型を解析するとともに、Lesch-Nyhan家系のDNAを採取した。尚本研究の課題ではないが、EBvirusでそのいくつかをtransformしてcell lineを得たので、来年度からの研究に供する予定である。Lesch-Nyhan症候群の羊水診断には、酵素活性測定,6-TG耐性,【^3H】-hypoxanthine取り込み測定の三法の組み合わせが有用であったが、部分欠損症では確診できない場合があった。本法を羊水診断に用いた結果、あるLesch-Nyhan家系において正常と推定した胎児が生まれた(生後の確定診断は未施行)。PRPP利用率もHGPRT欠損症のスクリーニングに有用であったが、この方法はAPRT欠損【I】,【II】型のスクリーニングにも応用できた。本年度は、正常人105名,痛風10名,Lesch-Nyhan4家系(家族全員ではない)の採血を行ない、白血球よりDNAを分離、精製した。プローベとしては当初PHP【T_2】を用いたがhybridizationせず、愛知県心身障害者コロニーの小笠原博士よりPHPT30を2回提供していただき、プローベとして用いた。DNAをBamHI,EcoRI,PstIの制限酵素で切断し、Southern hybridizationを行ないRFLPを調べた。現在解析を行なっている途中であるが、BamHIによるRFLPでは、既報(Caucasian)では12/25Kb16%,22/18Kb5%とされているにもかかわらず、日本人では12/25Kb11%,22/18Kb22%と後者が多い傾向にあった。現在sampleを増やしてこの点について調べているが、今後は他の制限酵素のRFLPを調べるとともに、今回の研究で得たLesch-Nyhanの家系sampleについて解析し、遺伝子診断、特に保因者の診断について検討していく予定である。
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