研究概要 |
言語間自動翻訳に使用する辞書の改良のため、語の意味内容記述の精密化と語義のあり方の言語間対照を目的として、次の手順で研究を行った。 1.意義特徴の分類に関する仮説の説定 いわゆる構造的意味論の考え方に従って、語の意義素を離散的な意義特徴の集合と考え、その意義特徴を「語義限定的」「評価的」「文化的」「対者的」の4種に分類した。 2.対者的特徴を担う要素のリストアップ 日本語において対者的特徴を担う言語的・非言語的要素の種類を洗い出し,それらを含む短文例を作成した。 3.各言語への翻訳と比較 作成された短文列を,英語,ドイツ語,ポルトガル語,の各言語に翻訳し、待遇上の差異が訳出可能であるか否かを検討した。 主な知見は次のようである。 ・予想された通り、この種の表現態度を言語的に明示することは、外国語においてはまれである。 ・言語的に区別ができる場合も、対者的な効果は語によって表されるのでなく、条件法を用いる,2人称を主語にすることを避ける,等の間接的手段を用いることが多い。 ・事実内容を表す文については、ほとんど訳し分けが不可能であるのに対し、依頼,要求,等を表す文には、各言語とも相当数のバラエティが用意されている。 ・同じ系統に属する英語とドイツ語との間にも、この面に関しては大きな違いが見られ、英語の方により豊富な表現手段が用意されている。 次年度以降に、文体的特徴,評価的特徴の検討を経て、語義限定的特徴による連語構造形成に対する制限を明らかにする予定である。
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