研究概要 |
本年度当研究で得られた成果を以下に要約する。 1)Paecilomyces Lilacinusの代謝物として既にその構造を明らかにした主成分paecilotoxin(leucinostatin)A(【I】),B(【II】)について新たな微量成分paecilotoxin C(【III】),D(【IV】)の構造を明らかにした。本研究は高速液体クロマト(LC)と質量分析計を直結したいわゆる直結型LC-MSにより行なったものであるが、特にジェット部の改良によりLC/uv検出に匹敵する再構成イオンクロマトグラムが得られるまでになったことが成功の因をなした。LC-MSは混合物の構造解析に今後大いに活用されると思われる。 2)構造-活性の相関を研究するためpaecilotoxin関連ペプチドの合成を行なった。まずペプチド合成に先立ってpaecilotoxinの構成アミン,2S-N',N'-dimethyl-propane-1.2-diamine(DPD)をBoc-Alanineを出発原料とし4行程を経て合成した。次いでpaecilotoxinのC末端部のヘプタペプチドに相当するR-Aib-Leu-Leu-Aib-Aib-β・Ala-DPDを水溶性carbodimideを縮合剤に液相法により合成した。Rには炭素鎖の異なる脂肪酸、(パルミチン酸,カプロン酸等)を結合させた。得られたヘプタペプチドについては抗菌活性のほか、paecilotoxin特有の脱共役活性発現について調べたが、このペプチド鎖では活性発現は見られなかった。 3)paecilotoxinの脱共役作用の作用部位の研究ではラット肝ミトコンドリアを用いて行ない、【F_0】【F_1】-ATPaseの【F_0】部が作用部位であることを特定することができた。またpaecilotoxinと同様の脱共役活性を示すシアニン色素,tri-S-【C_4】(5)の同活性をpaecilotoxinが協同的に増強する興味ある知見も得られ今後のさらに詳細な作用メカニズムの解明に期待がもてる。
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