研究概要 |
1.癌の放射免疫局在診断:ヌードマウスに移植したCEA産生肝癌HC-4に放射性ヨード標識した3種のモノクローナル抗体のうち10Aが顕著な特異的集積を示した。10Aを用いCEA産生癌患者5例中4例に陽性像を得ると共に抗体の体内動態を検討した。2.肝硬変症と肝癌のAFPの分別:肝硬変と肝癌でレクチンLCAとの反応性に差異があり分別法を開発した。検体に放射標識したAFPモノクローナル抗体【Y_1】を加え可溶性の抗原抗体複合体を形成させた後LCA-セファロースカラムに添加し吸着,非吸着分画の比率を算出した。肝硬変AFPでは吸着分画が34例中27例で10%以下であり肝癌では41例中34例で10%以上であった。肝硬変27例中7例に肝細胞癌が発生したがLCA結合が10%以上であった8例中6例(75%),10%末満であった17例中1例(5.9%)に肝細胞癌が発生した。肝硬変例でLCH結合の割合が増加しているものは肝細胞癌発生のhighrisk groupと思われた。3.モノクローナルAFP精製抗体制癌剤複合体の制癌効果:ラットの系ではAH66,AH66R肝癌の培養および移植株が標的腫瘍として用いられた。複合体は分子量1万のデキストランを用い抗体1分子につき30〜40分子のダウノマイシンが結合された。ラット大腿部に腫瘍を移植後10日目に10×12mmに増殖後複合体(抗体2mg,ダウノマイシン360μg含有)を静注し延命効果を調べると複合体注輸群は平均生存日数57日で対照群のうち最も延命を示した抗体とダウノマイシンの単なる混合物注輸群の41日に比べ有意の延命を示した。培養株でも5×【10^4】個の細胞を培養後複合体(抗体200μgとダウノマイシン24μg含有 添加後48時間後に単なる混合物に比べ有意の増殖抑制を示した。一方ヒトAFP産生腫瘍では卵黄のう腫瘍で複合体(抗体200μgとダウノマイシン70μg含有)を5日間隔で8回投与したところ複合体投与群で顕著な増殖抑制が観察された。ダウノマイシン単独または抗体との単なる混合物投与群は腫瘍への特異的集積性欠如のため全例共に中毒死した。
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