研究概要 |
本研究は、ウイルスおよび細胞癌遺伝子導入細胞株を用いて新しい癌遺伝子の単離を試みると同時に、各種癌遺伝子のトランスホーメーション協同作用を検討し、ヒト癌の発生機序をさぐることを目的とする。本年は、従来の結果に引き続き以下の成果を得た。1.骨肉腫・絨毛癌におけるc-oncの構造と発現:骨肉腫由来ヌードマウス移殖株10株中1例(WAJI)と絨毛癌細胞株5株中1例(ENAM1)にc-mycの増幅(8-10倍)を認めた。絨毛癌細胞株5株に合わせて11種(H-,K-,N-ras,N-myc,fos,src,yes,erbB1,fms,raf)におよぶc-oncの発現を認めた。絨毛癌細胞株HCCMは、アデノウイルス4型E1導入細胞にフォーカスを形成したが、NIH3T3細胞にフォーカスを形成しなかった。 2.癌遺伝子のトランスホーメーション協同作用:アデノウイルス12型E1B遺伝子の組み込み発現のあるマウスNIH3T3細胞株(3T3B1)を樹立し、各種癌遺伝子のトランスフェクション実験を行なった結果、不完全トランスホーメーション活性のみを示すアデノウイルスE1A遺伝子や変異導入SV40初期遺伝子(pMTA2)の導入によって、5-10倍のフォーカス形成の上昇と完全なトランスホーメーションの誘発を認めた。現在3T3B1細胞を用いて癌細胞DNAのトランスフェクション実験を継続している。ステロイドホルモンによって誘発されるアデノウイルス12型E1A遺伝子を導入したラット3Y1細胞を用いて、E1Aと他癌遺伝子の共同作用を検討した結果、v-ablとE1Aとのトランスホーメーション共同作用が見出された。また、ラット胎児線維芽細胞への同時トランスフェクション実験によって、不死化活性のみを示す変異導入SV40初期遺伝子(pMTA1)と活性型ras,v-src,v-mos,v-raf遺伝子がトランスホーメーション共同作用を示すこと、また3Y1細細胞を場としてpMTA1とc-myc遺伝子がトランスホーメーション共同作用を示すことが見出された。
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