研究概要 |
植物系炭素資源有効利用の目的に合った物質としてフルブラール類から容易に誘導できる置換テトラヒドロフラン類ならびにテトラヒドロビラン類の位置選択的環開裂反応の開発を研究してきた。すでにα位に置換基を有する環状エーテルの開裂で、一般のルイス酸触媒を用いると置換基を有する側の炭素-酸素結合が切断するのに対して、ヨウ化アシル、ことにピバリン酸ヨウ化物を用いると逆の非置換炭素側の結合が切断することを先の研究で見いだしている。今年度は基質構造が開環反応の選択性に及ぼす効果を検討した。 1.求核試剤共存下における四塩化チタンを用いた環状エーテルの開環について昨年に引き続き次ぎの研究を検討した。トリメチル-1-プロピンとの反応ではプロピニル基が有効に導入できた。ビニル置換THFはトリメチルヒドロシランとの反応でγ,位が還元される開裂反応が起こった。アリルトリメチルシランとのアルケニル置換環状エーテルとの反応でもγ,位にアリル基が導入され、この選択性はアルケニル基上置換基の電子的ならびに立体的効果の影響を受ける。 2.不飽和結合を有するフラン環をピバリン酸ヨウ化物で開裂させたところ、アルキル置換体とは逆に置換基を持つα位の結合が選択的に開裂する反応が進行した。(2-ビニルTHF,2,2-ジフェニルTHFなど)。一方2-アセトキシメチル-5-メトキシTHFではMeO基との結合が開裂し、開環反応は起こらなかった。いずれも中間に安定炭素陽イオンが発生する系ではピバリン酸ヨウ化物といえども一般ルイス酸と同様の反応挙動を示す。 3.ノルカラニリデンTHF挿入化合物の開環反応ではTHF環と共にシクロプロパン環も開裂するので、ペンテニル基を有するシクロヘキサン誘導体合成法に利用できることを見いだした。
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