研究課題/領域番号 |
61212006
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研究種目 |
特定研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 好正 東大, 物性研究所, 教授 (10080467)
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研究分担者 |
栃原 浩 東大物性研究所, 助手 (80080472)
田中 虔一 東大物性研究所, 教授 (00016718)
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研究期間 (年度) |
1986
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研究課題ステータス |
完了 (1986年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1986年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 超低エネルギーイオンビーム / 表面反応 / 分子状負イオン共鳴型解離吸着 / 窒素の解離吸着 / ニッケル(001)表面 |
研究概要 |
超低エネルギーイオンビームを金属表面に入射させると、表面に衝突する以前にすべて中性化する。従って、このようなイオンビームを用いると、通常の分子線に比べてはるかに高速な分子線源が得られたことになる。この特徴を利用して、金属表面で2原子分子が解離吸着する反応速度の測定を行い、ある入射エネルギーEpで吸着確率が増大する共鳴型現象をはじめて見出した。実験はセクター型の質量分析器を備えたイオンビーム発生装置からの【N^+】又は【N_2Λ+】の一定量を室温のNi(001)表面に照射し、解離吸着したN原子の吸着量のEp依存性を、Ep=1〜20eVの範囲で、オージェ電子分光を用いて測定した。吸着確率の測定結果は、(1)【N_2Λ+】入射の場合、Ep=2〜3eVでの明瞭な増加と、4〜5eVでの減少が見られた。5eV以上ではEp増加と共に緩やかに増加する。(2)入射角依存性をEp=3と5eVで測定したところ、入射角にはよらなかった。(3)【N^+】入射の場合はほぼ一定で、Epの増加とともに緩やかに減少し、Ep>30eVで【N-2Λ+】と【N^+】は一致した。本研究での実験結果は、【N^+】は原子状なので直接吸着できるが、【N_2】はNi表面に解離吸着するには、N-Nの強い結合を切ることと、N-Niの結合が比較的弱いために、2eV程度の活性化エネルギーが必要になることを示している。さらに、【N_2】の解離吸着がHollowayとGadzukにより理論的に予言された分子状負イオン共鳴型解離吸着の機構で起こっていることを示している。表面で【N_2Λ-】が生じ、【N_2Λ-】とその鏡像電荷による引力が解離吸着を促進し、さらにEpが増加すると、散乱による遠心力が鏡像力に勝って吸着確率が減少する。そして、反応の中間に【N_2Λ-】の状態が存在するため、吸着確率は入射ビームの表面に垂直な成分に依存しなくなる。本研究は、分子線を用いた気相反応で良く知られたharpooning過程が、金属表面での反応にも存在することを実験ではじめて示した。
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