研究概要 |
(1)ガーネット固溶体(メジャーライト,Mj)の安定域の決定,下部マントルにおけるCaO,【Al_2】【O_3】成分のホスト相の解明に主眼をおいて、CaSi【O_3】-MgSi【O_3】-【Al_2】【O_3】系の相平衡を、1600℃,27GPaまで詳細に調べた。Mjの安定域は圧力の増大とともにCaSi【O_3】-MgSi【O_3】ジョインの方向に拡大して、20GPa以上では上部マントルで輝石およびザクロ石として存在しているほとんど全ての成分を固溶してしまうことが示された。しかし、24GPa以上ではMgSi【O_3】に富むペロフスカイト(Mg-Pv),【{(Ca,Mg)_2Si_20_6}_(1-X)】【(A1_20_3)_X】組成の凍結不能な相、そして少量のスティショバイトがMjから解離することにより、Mjの安定域はパイロープ(Py)-グロショラー(Gr)ジョインの方向に急速に後退する。しかし、Mjの完全な消去には〜3GPaの圧力巾が必要とされ、この過程でPy-Grジョインより【Al_2】【O_3】に富む組成の新らしい相が出現することが明らかになった。このMjの解離は670km不連続に重要な帰与をすると見なされるが、下部マントル最上部の〜90kmの深さの巾にわたって進行することが注目される。 (2)上部・下部マントルの溶解分離の可能性を検討するため25GPaにおいて、未分化ペリドタイトの融解実験を行った。〜2000℃では固相線を超えず、〜3000℃では液相線を超えることが判明した。しかし、〜2500℃では液相(〜70%)と固相(〜30%)の共存が観察され、固相の同定,固・液相の化学組成が決定された。固相はMg-Pvであること、液相の組成は全岩組成よりSi【O_2】に乏しいことが明らかになった。さらに、固・液相間の【Al_2】【O_3】,CaO.の濃集度,Fe-Mg分配係数が決められた。これらのデータを基に、始源物質組成の変化と、固-液相分離に伴う主要元素の変動の関係を明らかにし、地球形成初期のマントルの溶融分化の検討を行った。
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