研究概要 |
本研究は鉱物の衝撃実験に数10GPa領域の圧縮-せん断波という特殊な衝撃波を導入することにより従来の圧縮成分に加えて衝撃圧縮下のせん断特性とそれによる変成作用に関する直接的な情報を得ることが第1の目的で、それによって鉱物の高次弾性,相転移,衝撃変成,地震波の伝播やそれによる成成、クレーターなどの研究を新しい観点から進めようとするものである。実験は熊大のキー付火薬衝撃銃を用いた圧縮-せん断波の計測実験と回収実験の2つのプログラムを組んで行った。 計測実験では先ず電磁誘導ゲージ法によって試料中2点での縦波・横波の粒子速度を高精度に計測するために次に述べるような計測システムのレベルアップを行った。ノイズに強い差動増巾回路専用のファラデーゲージとより強力な磁場を発生できるように多層連続コイルを新たに設計・製作し、さらに2点での信号を高精度に記録するために100MHzデュアルビームオシロスコープを導入した。その結果、サファイア中2点で20GPa以上の圧縮-せん断波下の縦波・横波粒子速度履歴を高精度に計測できるようになり、サファイアでは弾性限以上の圧力領域で超音波データから予想されるよりかなり低いせん断波速度を得、マイナスの4次の弾性定数を示唆する興味ある知見を得た。今後、オリビン,石英などについて計測実験を計画している。 又、回収実験では、試料室のフタにサファイア板を用いたアセンブリーを工夫することにより、10GPa以上の圧縮-せん断波による回収実験を実現した。このアセンブリーを用いて石英,オリビン,アノーサイトの回収実験を行い、その回収試料の走査型電顕による予備的な観察の結果、石英,アノーサイトでせん断波によるとと見られる変成を観察することができた。今後、さらに高い圧力領域の回収実験と、回収試料のくわしい微視的観察を進める予定である。
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