研究概要 |
混晶半導体に用いた量子井戸はすぐれた光学的特性が期待されている。この研究では、まず第1にこの系での励起子状態に対する格子振動の効果(いわゆるポーラロン効果)について研究を行った。量子井戸でのサブバニド状態及び励起子状態に対してエネルギー,振動子強度,状態に関与するフオノン数を変分法を用いて、初めて種々の効果をうまく取扱う計算を行った。その結果、ポーラロン効果は(1)励起子の相対運動,井戸幅,ポランシャル障壁の大きさなど状態に強く依存している事,(2)閉じ込め効果が大きい時は、井戸幅が小さくなるにつれて、その効果が近さくなる事、又、電子-正孔間のクーロン相互作用の有効誘電定数は静的誘電定数Eoより動的誘電定数Eαに近くなる事を示した。これは励起子が量子サイズ効果を受け、Z方向の閉じ込め、x-y面での半径の縮みを起こし、電子と正孔のポーラロン効果の打ち消し合いが起きる事を反映している。(この結果は6th Symp.Record of Alloysemiinductor pkys and Electronicsに発表又、投稿準備中である)。又、同様な計算を不純物にとらえられた束縛電子について行ない、ポーラロン効果の持性を明らかにした(日本物理学会(1986年9月及び1987年3月)で発表、又、投稿準備中)。第2に励起子に対する磁場効果について、エネルギー,光振動子強度の計算を行なった。磁場の方向依存性に着目し、それが量子サイズ効果と磁場によるエネルギーシフトの関係として明確に表われる事、又、実験データと比較して適当な有効質量を用いる事により非常に良い一致をみる事を示した(日本物理学会1986年9月に発表、又、投稿準備中)。第3に励起子の電場効果について、その効果が励起子が付随するサブバニド状態に強く依存している事を無限井戸の場合について示し、又、有限井戸の場合についても計算を行ない、ポテンシャル障壁の大きさと電場の強さとの関係で励起子がどのように状態を変化させるか明らかにした。
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