研究概要 |
カルモジュリンは、カルデスモン・アクチンバインディングプロテイン(ABP)系を通じてアクチンフィラメントの動態をカルシウム依存的に制御する。すなわち、カルシウム存在下ではカルモジュリンはカルデスモンと結合してアクチンから遊離する。アクチンはABPによってゲル化する。カルシウム不在下では、カルデスモンはアクチンと結合し、ABPの作用を抑制するため、ゲル化はおこらない(丸山ら、1985)。 生体内では、アクチンフィラメントにはトロポミオシンが結合しており、しかも、トロポミオシンはアクチンフィラメントをゲル化するABPの作用を阻害することが知られている(丸山、1979)。そこで、本研究では、カルデスモン・カルモジュリン・ABP・アクチン系におけるトロポミオシンの役割を明らかにする諸実験をおこなった。ゲル濾過法によって、カルデスモン,ABP,トロポミオシン間には何らの相互作用がみられないことを確めた。トロポミオシンとカルデスモンは、ともにABPのアクチンフィラメントへの結合を阻害した。しかし、カルデスモンは、F-アクチンへのABPの結合定数を減少させた。トロポミオシンは、ABPのアクチンへの結合定数を変えずに、結合量を減少させた。両者の仂きには違いがある。カルデスモンのABPゲル化作用の阻害は、トロポミオシンによって増強された。カルデスモンとトロポミオシンの存在下でも、カルモジュリンはアクチンフィラメントのABPによるゲル化にカルシウム感受性を与えた。すなわち、カルシウムのあるときゲル化がおこり、カルシウムをEGTAでキレートするとゲル化は生じなかった。 本研究は、ニワトリ筋胃から得られたタンパク質を用いておこなわれ、アクチンフィラメントのカルシウムによる状態変化が調節タンパク系によっておこることが実証された。
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