研究概要 |
ニトレンジピンをはじめとするジヒドロピリジン・カルシウム拮抗薬が阻害する電位依存性カルシウムチャンネルは骨格筋型,心筋型,脳型の三種のサブタイプの存在が予想されている。我々は[【^3H】]ニトレンジピン結合活性を指標にラット脳より同ラジオアイソトープリガンドに対する受容体(電位依存性カルシウムチャンネル)の可溶化に成功した。可溶化はラット脳シナプス膜分画を材料とし、界面活性剤(CHAPS,Brij58,Lubrol WX)及びグリセリンを含むトリス緩衝液を用いた。ホモゲナイズと超音波処理後、100K×g遠心により可溶化受容体は上清に回収された。CHAPSの至適濃度は10mM、グリセリンは20%(w/v)以上を必要とした。CHAPSのみによる"可溶化受容体"は分子量が非常に大きく、膜小片を多く含むことが考えられ、0.25%(w/v)Brij58及び0.025%(w/v)Lubrol WXを加えることにより完全に可溶化された。可溶化受容体の分子量はゲル濾過及び庶糖密度勾配遠心により、それぞれ、180K及び80Kであった。可溶体受容化の〔【^3H】]ニトレンジピンに対する親和性(【K_D】)は5.8nMであり、膜に組み込まれたものより約10倍親和性が低下した。可溶化受容体は非ジヒドロピリジン・カルシウム拮抗薬であるベラパミル,プレラミンによって[【^3H】]ニトレンジピンとの結合が阻害された。ベラパミルは[【^3H】]ニトレンジピン結合を100%阻害するのに対して、プレニラミンの最大阻害度は70%であった。両者共に50%阻害濃度(【IC_(50)】)は100nMであった。ウサギ骨格筋Tチュブルの同受容体の可溶化条件(10mM CHAPS及び20%(w/v)グリセリン)を用いラット脳[【^3H】]ニトレンジピン受容体を"可溶化"すると上述の如く膜小片で多く含んだ状態である上に、[【^3H】]ニトレンジピン結合活性の半減期は1.5日であった。我々の条件による可溶化では活性の半減期は8.5日であり、安定性が約6倍増加した。
|