研究概要 |
精製受容体をSH基修飾剤(DTT,DTNB)で処理した後、その〔【^3H】〕QNB結合のムスカリン性アゴニストによる阻害曲線を非線形最小二乗法(SALS)で解析した。高濃度(0.1M)DTT処理によりアゴニスト高親和性は消失し、低親和性のみが観察されたが、DTTを除くと高親和性結合(25-35%)が再び現れた。DTNB処理により、高親和性結合の割合が70%に増加し、この高親和性はDTNB除去後も続いたが1mMDTT添加で消失した。受容体の約30%はDTNB処理後も低親和性に留った。 受容体とG蛋白質再構成標品では、受容体の10-20%がG蛋白質の有無に拘らず高親和性、40-50%がG蛋白質およびGTP(GDP)依存性に高親和性あるいは低親和性を示し、30-50%は常に低親和性を示した。 ブタ大脳から精製した受容体をトリプシン分解し、分離されたペプチドのうち5個のアミノ酸配列が決定された。これらの配列からcDNAがブタ大脳ライブラリーより検索され、その構造が決定された。cDNAの構造より推論されたアミノ酸配列中には、前記ペプチド中3個と同一部分が見出された。残り2個のペプチドをプローブとしてのブタ心臓ライブラリーの検索により、新たなcDNAが検出,単離,構造決定がなされた。アフリカツメガエルでの発現の結果、サザンブロットの結果より、前者がM1サブタイプ,後者がM2サブタイプであると考えられる。 受容体とG蛋白質の再構成標品は、〔【^3H】〕GTPと〔【^3H】〕GDPを可逆的に結合した。結合の平衡定数と時間経過は、アセチルコリン添加による影響が見られなかった。。一方、〔【^3H】〕GTPと〔【^3H】〕GDPの遊離の時間経過はアセチルコリン添加により速められた。アセチルコリン添加により速められた〔【^3H】〕GTPまたは〔【^3H】〕GDPの量は受容体の量の5-10倍で受容体1分子が複数個のG蛋白質分子に触媒的に作用していることを示した。
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