研究概要 |
本年度はフェノチアジン類,メリチン,マストパランおよび合成マストパラン誘導体についてCaMとの相互作用様式を結晶学的,物理化学的に解析し、HPLCによる複合体の分離,生体膜との結合性,溶血作用を検討した。 1.各種複合体の結晶化条件を改良した。例えば母液のpHを下げること,ポリエチレングリコール8000を用いること,複合体をHPLCで分離してから結晶化するなどである。【Ca^(2+)】-CaM-クロルプロマジン複合体結晶については【K_2】Pt【Cl_4】,Pb【(CH_3COO)_2】による重原子同型置換の条件を確立し、4【A!°】分解能の回折強度データを集めた。構造因子の相対変化は13〜14%であった。 2.マストパランT誘導体(T′-11,T′-14)を液相法で合成し、【Ca^(2+)】-CaMとの相互作用をCDスペクトルにより解析した。両ペプチドともCaMとの複合体形成時に見られるのと類似のスペクトルが30〜75%TFE添加により200〜300nm附近に観測された。その絶体値はマストパランの場合より小さい。 3.【Ca^(2+)】-CaM-ペプチドの複合体のイオン交換HPLCによる分離を試みた。メリチンと【Ca^(2+)】-CaMのモル比を順次変えて混合し、DEAE-5PWカラムに添加してから0-0.4Mの食塩濃度直線勾配により溶出した。CaMの溶出位置より前に複合体が溶出された。複合体の確認は逆相カラムで行った。ただし、マストパランおよび誘導体ではCaMとの複合体は認められなかった。 4.上記ペプチドとCaM-Sepharose4Bおよび赤血球膜との結合活性を比較した。メリチン,マストパランは前者に関してはマストパラン誘導体より結合能は大きいが、赤血球膜との結合性に関しては有意な差はなかった。 5.溶血活性はメリチン80に対してマストパラン10,マストパラン誘導体で両者とも0であった。このように各ペプチドはCaMとの相互作用,赤血球膜との結合性,溶血活性に関して明らかに異なる挙動を示し、相互作用様式の違いを示唆していると思われる。
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