研究概要 |
本年度はミエロペルオキシダーゼとともに好中球に存在し、ミエロペルオキシダーゼに過酸化水素又は【O^-_2】などの活性酸素種を供給するNADPHオキダーゼ系およびその欠損症である慢性肉芽腫症について解析を行い下記の知見を得た。 1.NADPHオキシダーゼ系の反応初産物の同定:活性化された状態にある好中球は【H_2】【O_2】,【O^-_2】をはじめとする多種類の活性酸素を生成しそれらが殺菌剤として利用される。しかしそれらが別々かつ同時に生成されるのか、あるいは最初に【O^-_2】が発生し,それから逐次的に他の活性酸素種が生ずるのかについては確証がなかった。我々はこの点を人工的に修飾した西洋ワサビペルオキシダーゼを【H_2】【O_2】ならびに【O^-_2】の捕捉剤として用いる新しい方法を用いて解明し,【O^-_2】がNADPHオキシダーゼ系の初産物であり,【H_2】【O_2】,OHラジカル,【^1O-2】などはこれから派生することを証明した(発表論文1,Makino,R.ら)。 2.NADPHオキシダーゼ系の実体:低温スペクトル法を用いて好中球のチトタローム類の解析を行い,これが健常者の好中球に存在するが慢性肉芽腫症患者の好中球には欠損していることを再確認し,各種の反応動力学的な解析とあわせてbタイプのヘムタンパクがNADPHオキシダーゼ系の一員であることを示唆する結果を得た。又,系の精製を試みブタ好中球から強い活性を有する無細胞系標品を取り出すことに成功し,種々の脂肪酸がこの系を活性化することを見い出した(発表論文3,Tanaka,T.ら)。 3.非TPAタイプ発癌プロモーターによる好中球の活性化:パリトキシンならびにタプシガルギンがヒトおよびブタ好中球を活性化して【O^-_2】を生成することを初めて見い出し,その大略を報告した(発表論文2,Kano,S.ら)。 今後はミエロペルオキシダーゼ系とNADPHオキシダーゼ系を統合して好中球の殺菌機構を解明したい.
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