研究概要 |
論理的な内容を自然言語で表現したテキストの読解過程を「誤解」という面から分析して、誤解を防ぐための援助方法について調べた。 1.カテゴリーの論理積を表す言語表現の理解に関する調査。--2つのカテゴリーA,Bの論理積を表す言語表現を示して、該当例を選ばせる場合には、AとBとが共通要素をもたない場合や、A・BがAまたはBにまったく含まれてしまう場合など、AとBが特別の関係をもっている場合に誤解が起こりやすい。同じような混乱は、ベン図式の中に該当する選択肢を書き入れさせた場合でも、2×2の分類表の中で選択肢を分類させた場合でも、同様に起こる。そこで、Aか非Aか、Bか非Bかという判断によって進行する流れ図に従って分類させると、A・Bが共通要素をもたない場合もあり得ることがわかる。このことから、「で」、「と」、「か」などカテゴリーの結合を表す助詞が担う意味は人々が予想する程大きくはなく、文脈や予備知識の影響を受けることが大きいものと考えられる。誤解を防ぐには、理解のための手続きを示したり、起こりそうな誤解に関する注意書きをつけたほうがよいと思われる。 2.確率の乗法定理を考慮して解釈すべき文章の読解。--確率事象A,Bについて、AとBがともに起こる確率は、A,Bそれぞれの確率より小さいが、A,Bがともに起こることを説明する文章は説明がよりくわしくなり具体性が増すので、むしろ、それが起こりやすいことのように誤解されやすいことが確かめられた。 3.相関関係の対称性を考慮して解釈すべき文章の読解。--相関関係において、AならばBという関係とBならばAという関係は同程度である(対称性)が、人々は時間関係などを考えて、一方が他方よりも起こりやすいことだと判断することが確かめられた。
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