光センシング技術は、非接触、高速、高精度な計測手段として多くの分野で実用化されつつある。しかし、センシング技術の基本は線型光学現象にもとづくものが多く、非線型現象の利用の試みはほとんど無い。本研究の目的は、この非線型現象を光センシング技術に導入することにより、従来の線型光センシング技術を陵駕する新らしい光センサを開発することにある。 研究の第一歩として、光双安定効果を利用した光センサ(特に高感度微小距離センサ)の開発に関する基礎研究を行なった。光双安定素子がきわめてわずかの入力光変化に対して特異な非線型応答(微分利得特性など)をすることに注目して、これを検出系に利用した光干渉センサをいくつか提案した。光双安定干渉センサでは、干渉計で得られる位相情報を光双安定系に入力し干渉計へ帰還するもので、従来の光双安定現象が強度入力に対して作用するのと大きく異なっている。 まず、半導体レーザと光検出器を用いて、光・電子ハイブリッド型の光双安定素子を試作した。次に、周波数安定化レーザを光源とした干渉計からの出力光の一部を光双安定系に入力し、その出力信号を干渉計の参照鏡信号にフィードバックすることにより、光双安定干渉センサシステムを構成した。定電流電波を用いて半導体レーザの出力安定化と制御を行なった。 以上の実験結果にもとづき、微小距離センサ開発のための試作実験を行ない、実用上の問題点を検討した。
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