研究概要 |
本年度の特定研究では、補酵素機能発現に最も重要なアデノシル基のアデニン部分およびDリボース部分が炭素-コバルト(C-Co)結合のアポ酵素による活性化において果たす役割について、以下に要約される成果を得た。 1.ビタミン【B_(12)】補酵素のアデニン部修飾アナログの合成と補酵素喜能 アデニン部分を修飾した5つのアナログを合成し、その構造と補酵素機能およびアポ酵素との結合性の関係を明らかにした。トデアザ体および3-デアザ体は天然補酵素のそれぞれ56%,46%の活性を保持していたが、クーデアザ体,【N^6】【N_-^6】ジメチル体,グアノシル【B_(12)】は補酵素として機能せず、拮抗阻害作用を示した。補酵素として活性なアナログのC-Co結合は酵素反応中にホモリシスし、不活性なアナログのそれはアポ酵素に結合しても活性化を受けないことを分光学的に示した。補酵素機能発現およびC-Co結合活性化におけるアデニン部分の窒素原子の重要性の順序はN-7〉6-N【H_2】〉N-3〉N-1であると結論できた。さらに、5′-デオキシアデノシンおよびアデニンの解離定数を測定し、アデニン部分での酵素-補酵素相互作用の性質を考察した。 2.補酵素機能発現およびC-Co結合活性化におけるリボース部分の役割 補酵素としては機能しないにもかかわらず、C-Co結合がアポ酵素によって活性化され、開裂していくアナログとしてアデニニルエチル【B_(12)】を初めて見い出した。このアナログが酵素とアナログの両方の濃度に依存する二次式に従って分解され、ヒドロキソ【B_(12)】と9-エチルアデニンを生成することを【^(14)C】標識アナログを用いて確立すると共に、後者に新たに取り込まれた水素原子の由来を【^3H】や【^2H】で標識した基質や水を用いて調べた。アデニンとコバルトの間の連結鎖の炭素数が3以上のホモログでは酵素によるC-Co結合の活性化は認められなかったことから、連結鎖の長さと硬さがC-Co結合の活性化を受けるうえで重要であると結論した。
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