研究概要 |
前周期遷移金属有機金属化合物の高い求核性とα-軌道を介しての基質の配位能を利用した位置および立体選択的有機反応を開発してきたが、本年度は一連のジルコニウム-ジエン錯体とα,β-不飽和ケトン,不飽和エステル,置換オキシラン,二酸化炭素,イソシアネート等二官能性基質との反応を検討した。ジエン錯体の代表例としてZr【Cp_2】(isoprene)(【I!〜】)を用いた。1.不飽和アルデヒドや不飽和ケトン(アクロレイン,メチルビニルケトン,2-シクロヘキセノン等)は【1!〜】に高選択的(99%)に1,2-付加し、イソプレンのC1位のみでC-C結合生成反応が起きた。 2.不飽和エステルは置換基の有無にかかわらず、【1!〜】に1,2-付加し(99%選択率)、【R^1】【R^2】C=C【R^3】CO基がイソプレンのC1位で結合したケトンが加水分解により収率よく得られた(C-C結合生成時の選択率,98%)。 3.ビニルおよびフェニル置換したオキシランは【1!〜】と置換基のある側のオキシラン炭素上で選択的(98%以上)に反応し、C-C結合生成はイソプレンC1炭素との間のみで起きた。(E)-および(Z)-1-フェニル-2-メチルオキシランとの反応から立体選択性はかなり小さいと結論した。 4.二酸化炭素とジルコニウム-ジエン錯体の反応は、ジエンの配位様式(S-トランス,S-シス)と補助配位子(Cpや【C_5】【Me_5】基)のかさ高さにより異なった反応が進行し、3種類の反応形式(1:1,1:2,2:1)にまとめることができる。それぞれ高選択的に反応は進行する。 5.イソシアネートとジエン錯体の反応では補助配位子の大きさはあまり問題とならず、フェニルイソシアネートを用いた時はジエンの両末端にイソシアネートが付加し、t-ブチルイソシアネートを用いた時は1:1付加物のみが生成した。金属を含む中間体のコンフォメーションの安定性により立体化学が決定される。
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