研究概要 |
1.トリアリ-ルアンチモンジブロミドとビス(トリフルオロメチル)ベンジルアルコールのジリチオ体の反応により新規な超原子価化合物である。1,1,1-トリアリール-3,3-ビス(トリフルオロメチル)-3H-2,1-ベンズオキサスチボール(V)(【1!〜】)を合成した。【1!〜】は求電子剤に対してもまた熱的にも非常に安定であった。 2.そこで、【1!〜】に対して当量のメチルリチウムをテトラヒドロフラン中-78℃で加えると単一の6配位アート錯体(【2!〜】:12-Sb-6)が定量的に生成した。【2!〜】+20℃に昇温すると3種の位値異性体(A,B,C)の下衡混合物になった。平衡比は68:23:16であることが【^(19)F】-NMRにより決定された。この系にヘキサメチルリン酸トリアミドあるいはクラウンエーテルを加えると、平衡速度は極端におそくなった。これらのことから、この平衡はリチウムイオンがアンチモン-酸素結合を開裂し、生成したアンチモン(V)が位置異性化をおこした後、直ちに再閉環するという、分子内解離機構によるものであることが明らかになった。 3.6配位アート錯体(【2!〜】)をエタノール,水,フェノール,酢酸などのプロトン酸でクエンチするとアンチモン-酸素結合は開裂せずに、アンチモン-炭素結合が開裂した。すなわち、トルエンとトリル基が1個メチル基に置換されたアンチモン(V)(【3!〜】)およびメタンと出発原料(1)が生成した。プロトン酸の酸性度が大きくなると、アンチモン-トリル結合が切断の割合が増大し、【3!〜】の収率が増加した。 4.ビスマスを中心原子として、【1!〜】と同様な化合物(【4!〜】)を合成した。【4!〜】は熱的にも【1!〜】よりは不安定であり、酸クロリドと反応してビスマス-酸素結合が開裂して、トリアリールビスマスと対応するエステルを生成した。
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