研究概要 |
有機ケイ素および有機典型元素化合物の機能と物性に関する研究は、次世代技術へのシーズの宝庫として最近盛んに研究されている分野である。本研究はこのような化合物の機能と物性を更に一段と向上させるために、ポリマー主鎖の規則的な位置に遷移金属を導入したポリマー錯体を合成し、それらの物性や機能と構造との相関関係を系統的に研究することを目的とする。本年度はポリマー錯体の合成法の研究に重点を置き、次の4法を研究した。 【i】)ケイ素およびリンを含むα,ω-ジエチニル誘導体とトランス-ビス(トリアルキルホスフィン)ジクロロ金属錯体(金属=Pt,Pd)との第一銅塩を触媒とする脱塩化水素重縮合 【ii】)トランス-ビス(トリブチルホスフィン)ジエチニルニッケルとα,ω-ジエチニルケイ素およびリン誘導体とのエチニル基交換反応による重合 【iii】)白金とケイ素を含むα,ω-ジエチニル型錯体の塩化第一銅-テトラメチルエチレンジアミン-酸素系試薬を用いた酸化カップリング重合 【iv】)ビス(ジメチルシリル)アセチレンとカルボニルクラスターとの反応によるケイ素アセチレンを主軸としたクラスター錯体の合成法を研究した。【i】),【ii】),【iii】)の合成法では、分子量1万〜8万の有機溶媒易溶のポリマー錯体の合成に成功し、ポリマー構造のキャラクタリゼーションを行った。得られたポリマー錯体の主鎖中のアセチレン基と種々の金属錯体との反応を研究した結果、合成法【iii】)で得られた立体障害の少ないジイン型ポリマーがコバルトカルボニルやニッケル2核錯体との反応により、2核型アセチレン錯体を生成すること、電子スペクトルでポリマー中の金属間に弱い相互作用が認められること、ヨー素ドープにより、約【10^(-5)】S【cm^(-1)】の電導性を示すことなどが明らかとなった。また得られたポリマー錯体のリオトロピック液晶性についても検討した。
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