研究概要 |
申請者らが見出したCuO/ZnO系などセラミック半導体ヘテロ接触・接合により、純水,空気中湿度,有機溶媒,強電解質水溶液などの溶媒識別を試みた。まず、CuO/ZnO接触系(微小な間隙をもつ接合)の純水中での導電特性,導電機構を調べた。順方向(P型半導体を正)に電圧を印加した場合に大きな電流が流れる整流性を示した。これは、P型半導体表面で水が酸化分解され水素イオンと酸素ガスが生成し、その水素イオンがn型半導体表面へ移動することによることが確かめられた。また、この素子の空気中での順方向電流は湿度の増加に比例して増大した。接触界面に水が物理吸着し、その吸着水層で液体類似の電気伝導が生ずるためと考えられる。この電流変化はNiO/ZnO接触系でも確認され、半導体の導電率,表面粗さを制御することにより感湿特性を制御できることが判明した。これらの湿度による電流変化を利用し、線形性の優れた湿度センサーを作製できることが明らかとなった。溶媒中のCuOは強電界下では溶解するため、安定なNiO/Ti【O_2】系を用い各種溶媒の識別を試みた。溶媒中での順方向電流は、HCl水溶液>Mg【Cl_2】水溶液>純水>エタノール>イソプロピルアルコールの順に大きかった。有機溶媒では分子量の大きなもの、酸化反応の起こりにくいもので電流値が小さく、これは、半導体表面で生成する水素イオンの生成量および移動度が溶媒により異なりためと考えられる。強電解質水溶液では、酸性,塩基性電解質によらず濃度の増加に伴い順方向電流は増大し、その依存性は電解質の種類により異なっていた。この現象は、半導体表面での酸化還元反応に水素イオン水酸イオンに加えて電解質イオンの反応も含まれていることを示しており、電解質種の識別も可能であることを示唆している。今後、さらに短パルス法や容量測定などの方法を用い、溶媒分子識別機能の特性解析,機構解明を試み、新機能の探索を行う予定である。
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