研究概要 |
1.能動輸送膜センサー:uphill(濃度勾配に逆らう)のイオン、分子の選択的輸送を膜電極センサーに組み込み、被分析対象の濃度を選択的に増幅できる新しいセンサーを開発した。既にその原理と可能性について報告し(Anal.Chem.58,1798,'86)、内部溶液の微小化による増幅能の増大の効果について報告した(日化誌,分子識別特集号,3月号,'87)。更に応答時間短縮のための膜の薄膜化、またセンサーの増幅能を支配するuphill輸送の効率を高めるため、生体系のATPaseの機作を模倣した系を試みはじめた。2.アニオンイオノフォアセンサーの開発:アルカリ、アルカリ土類イオン等に対するイオノフオア型センサーは確立した方法になっているが、アニオンに対するイオノフオアセンサーは未だほとんど例がない。我々は大環状ポリアミン16ane【N_5】で液膜型ATPセンサーを製作し、種々の評価を行い、応答機構についても考察した。3.イオンチャンネルモデルセンサーの試作:これは生体膜表面での物質の認識とそれに伴なうイオンチャンネル開閉による情報の増幅を新しい化学センサーの原理に利用しようとするもので、未だ確立した概念になっていない。我々は、たん白質ペンダントリポソームの抗原/抗体/補体反応による"イオンチャンネル状"現象(生物学で定義されているそのものではない)の生起をモデルとして標記センサーのモデル実験を行った。以上のように本年度は生体、特に細胞膜がもっている重要な特性をモデルに、3種類の異なった新しい電気化学的検出に基づいた化学センサーについて報告した。すなわち、キャリア含浸ナイロン膜を用いた、uphill輸送膜センサー、たん白質化学修飾リポソームとイオン選択性電極を用いるイムノセンサー、更には脂溶性大環状ポリアミンを用いるATPセンサーである。
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