研究概要 |
マボヤあるいはアカボヤの4細胞胚の分裂を抑制し、アクチナーゼ2%海水中で卵殻膜を除去後、各割球を固定して単離した。単離した割球は顕微鏡観察および電気的測定が常時可能な実験槽に移し連続培養した。培養した割球の最終の分化型を調べたところ、頭側の【A_3】割球はNa,CaおよびKチャネルによるNaスパイクを示し神経型に分化する場合が多かった。尾側の【B_3】割球はCaおよびKチャネルによるCaスパイクを示し筋型に分化するか、あるいは持続的なCa活動電位を示して表皮型に分化した。4細胞胚割球は複数回の電極刺入に耐えるので、培養下の単離割球について分化過程の各段階で、各種イオンチャネルの分布を膜電位固定下で定量し、分化の最終段階においても同一の割球について分化型の決定および分化完成度の定量的測定を電気的に行なった。 最終の分化型が神経型であった【A_3】,筋型であった【B_3】,表皮型であった【B_3】割球についてそれぞれ分化過程の途上におけるイオンチャネルの分布の変化を比較した。神経型に分化した割球に見られるNaチャネルは卵細胞膜に存在するNaチャネルとは質的に異なり、不活性化過程が遅延していることがわかった。すなわち、分化に伴なってNaチャネルの分子種の交代が示唆された。また卵型のNaチャネルは発生の開始時点に存在し、神経型,筋型,表皮型のいずれに分化する場合においても、分化した割球においては減少し、最終的には消失した。しかし減少過程は単純でなく、発生時間15時間以後に初期の減少期から転じて増加傾向を示し、30時間前後で極大になったのち再び減少した。分化型のNaチャネルの増加は神経型分化をおこなった割球のみに見られ、この分化の明確な指標となることがわかった。
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